2016年10月10日 (月)
遅まきながらアップします。
インドネシア総領事館のご招待で下記開会式(24日)に行ってきました。
2016年インドネシアの映画祭
Festival Film Indonesia 2016
会期: 2016年9月24日(土)~25日(日)
開会式 24日 12:00~
場所: シネマート心斎橋
(大阪市中央区西心斎橋1-6-14, ビッグステップ4階)
作品:
1. "Aach, Aku Jatuh Cinta" (アッ、恋に落ちてしまった!)
Garin Nugroho (ガリン・ヌグロホ)監督
2. "Tampan Tailor"(タンパン・テイラー)
Guntur Soeharjanto(グントゥル・スハルヤント)監督
3. "Love you, Love you not"(ラブユー・ラブユーノット)
Sridhar Jetty(スリダル・ジェティ)監督
開会式後の上映作品が1なのだが、これがガリン・ヌグロホの作品であることに気づいて驚く。いかにも海外映画祭受けしそうな作品ばかり作っているという印象があったので、ラブコメを作っているのは意外だった。
wiki pediaにすでに項目ができていたので、リンクを張っておく。
https://id.wikipedia.org/wiki/Aach..._Aku_Jatuh_Cinta
相変わらず私は、この人の作品がそれほど好きではない。今まで何作か見たけれど、登場人物の心の変化が掘り下げられなくて、あるいは私が分かるような掘り下げ方でなくて、どこか沿い遂げられないという感覚がある。が、彼は絵的に美しいシーンを切り取るのがうまいという気がする。たぶん、彼はその絵を作り出すのが主眼で、そのために、ストーリーや人物は存在するのではないかという気がする。
インドネシア総領事館のご招待で下記開会式(24日)に行ってきました。
2016年インドネシアの映画祭
Festival Film Indonesia 2016
会期: 2016年9月24日(土)~25日(日)
開会式 24日 12:00~
場所: シネマート心斎橋
(大阪市中央区西心斎橋1-6-14, ビッグステップ4階)
作品:
1. "Aach, Aku Jatuh Cinta" (アッ、恋に落ちてしまった!)
Garin Nugroho (ガリン・ヌグロホ)監督
2. "Tampan Tailor"(タンパン・テイラー)
Guntur Soeharjanto(グントゥル・スハルヤント)監督
3. "Love you, Love you not"(ラブユー・ラブユーノット)
Sridhar Jetty(スリダル・ジェティ)監督
開会式後の上映作品が1なのだが、これがガリン・ヌグロホの作品であることに気づいて驚く。いかにも海外映画祭受けしそうな作品ばかり作っているという印象があったので、ラブコメを作っているのは意外だった。
wiki pediaにすでに項目ができていたので、リンクを張っておく。
https://id.wikipedia.org/wiki/Aach..._Aku_Jatuh_Cinta
相変わらず私は、この人の作品がそれほど好きではない。今まで何作か見たけれど、登場人物の心の変化が掘り下げられなくて、あるいは私が分かるような掘り下げ方でなくて、どこか沿い遂げられないという感覚がある。が、彼は絵的に美しいシーンを切り取るのがうまいという気がする。たぶん、彼はその絵を作り出すのが主眼で、そのために、ストーリーや人物は存在するのではないかという気がする。
2016年10月09日 (日)
事前告知ができなくて、すみません。次のイベントで踊りました。
バティックと芸術、そして思い出の中のアキさん
Batik, Seni & Mas Aki dalam kenangan
日時: 10/8(土)14:00-16:00
場所: 船場センタービル 3号館 B1
協力: 在大阪インドネシア総領事館、ITPC大阪・アキさんの友人一同
※アキさんは、かつて在大阪インドネシア総領事館に勤めておられましたが、今年6月に死去されました。このイベントは10/7-9に行われる『船場まつり』の一環として、故アキ・アディシャクティ氏の家族がオーナーを務めるギャラリー・バティック・ジャワの展示会場で行われました。
私が踊ったのは私自身の作品です。もともと、亡くなった人に手向ける作品として作ったもので、今回の趣旨に沿うと考えました。
タイトル: 妙寂 Asmaradana Eling-Eling
振付: 冨岡三智
音楽: Martopangrawit
初演: 2001年、Sanggar Negeri Suket (インドネシア・ソロ)にて


photos by 萩原フミワティさん
バティックと芸術、そして思い出の中のアキさん
Batik, Seni & Mas Aki dalam kenangan
日時: 10/8(土)14:00-16:00
場所: 船場センタービル 3号館 B1
協力: 在大阪インドネシア総領事館、ITPC大阪・アキさんの友人一同
※アキさんは、かつて在大阪インドネシア総領事館に勤めておられましたが、今年6月に死去されました。このイベントは10/7-9に行われる『船場まつり』の一環として、故アキ・アディシャクティ氏の家族がオーナーを務めるギャラリー・バティック・ジャワの展示会場で行われました。
私が踊ったのは私自身の作品です。もともと、亡くなった人に手向ける作品として作ったもので、今回の趣旨に沿うと考えました。
タイトル: 妙寂 Asmaradana Eling-Eling
振付: 冨岡三智
音楽: Martopangrawit
初演: 2001年、Sanggar Negeri Suket (インドネシア・ソロ)にて


photos by 萩原フミワティさん
2016年10月09日 (日)
公演は無事終了しました。ご来場下さいました皆様、有難うございます。今年は台風接近のせいか、10月に入ったにも関わらず、かなり蒸し暑い夜でした。翌日は雨になりましたが、お天気がもってほっとしています。公演の写真をご紹介します。

第8回ジャワ舞踊・影絵・ガムラン奉納公演
観月の夕べ
日時: 10月2日(日)午後6時~8時
場所: 岸城(きしき)神社 社殿前
大阪府岸和田市岸城町11-30
併催: 蛸地蔵商店街手作り市 午後2時~境内
出演…舞踊
・ウィジャヤ・クスマ (坂口裕美子、櫻井有紀、西田有里)、
・大石麻未、岡戸香里、西岡美緒、
・冨岡三智
出演…ガムラン音楽
・ハナジョス (ローフィット・イブラヒム、佐々木宏実)
・ビンタンララス (ハナジョス、近藤チャコ、西田有里、松田仁美、山下奈美、
ミヤント、アナント・ウィチャクソノ)
出演…ダラン(影絵の語り・人形遣い)
・ローフィット・イブラヒム
主催■ ジャワ舞踊の会、ハナジョス
後援■ 岸和田市、岸和田市教育委員会、特定非営利活動法人ラヂオきしわだ、
在大阪インドネシア共和国総領事館
協力■ 蛸地蔵商店街手作り市、フロントダッシュ(園田恵子)

photo by 園田恵子さん
・ 岸城(きしき)神社宮司: 阪井正明様 ご挨拶
・ 岸和田市長: 信貴芳則様 ご挨拶
だんじり祭りの試験曳きのため、法被姿のままでご来場くださいました。
・ 在大阪インドネシア共和国総領事館の総領事他皆様は、昼の予定地から少々遅れてのご来場となりました。
舞踊 「サリ・クスモ」
(ウィジャヤ・クスマ メンバー)
作品名は花の精髄の意味。ジョグジャカルタ様式の舞踊で、一番最初に学ぶ曲です。1976年、サスミント・マルドウォ振付。
舞踊 「ゴレッ・ランバンサリ」
(大石麻未、岡戸香里、西岡美緒)
ゴレッは、ジャワのジョグジャカルタ王家のハムンクブウォノⅦ世の時代(1877- 1920)に創られた女性舞踊のジャンルで、当初、宮廷内では女形によって踊られていました。ゴレッには「探し求める」という意味があり、舞踊では、人生の意味や理想を探し求めつつ、大人になってゆく時期の女性を描いています。
ゴレッには伴奏曲と振付の異なる数種類があります。「ランバンサリ」は伴奏曲の名前で、同じ曲でも時代を経るに従って、短いバージョンが作られてきました。今回上演するのはハメンクブウォノVII世当時の振付と言われ、時間も長いため、現在では上演される機会が少ないものです。古い作品のため動きはシンプルでゆったりとしていますが、この時代のゴレッにしかない、おっとりとした美しさがあります。咲き誇る花のような、幸福感に満ちた作品です。

photo by 鈴木朋子さん
― 休憩 ―
舞踊 「ガンビョン・ボンデット」
(冨岡三智)
ガンビョンは20世紀初頭にジャワのスラカルタ(通称ソロ)で発展した舞踊です。民間の豊穣祈願の舞踊に由来するため、結婚式でよく上演されます。現在では若い女性が複数で踊ることが多いのですが、本来のガンビョンは、一晩に一人の踊り手が太鼓の規則に合わせて、半ば即興的に踊り通すものでした。唯一の女性である踊り手は、男性楽師達のマドンナだったのでしょう。ガンビョンも昔の有名な踊り子の名前だと言われています。
ガンビョンの太鼓奏法は現在のガムラン音楽演奏の基本です。本来、どのような曲を使っても伴奏できますが、現在では決まった曲でしか上演されていません。今回は通常と違い、「ボンデット Gd. Bondhet Sl. nem」の曲を使い、独自のアレンジで上演します。

photo by 鈴木朋子さん
影絵 ワヤン・クリ 「プラン・クンバン」
(ダラン: ローフィット・イブラヒム)
ワヤン・クリとは、水牛の皮で作られた影絵人形によって繰り広げられる影絵芝居のことです。ジャワでは、現在でも個人や団体の様々なお祝いごとの際に、ワヤン・クリが夜を徹して上演され、庶民の人気を得ています。ダランは、語りながら音楽に合図を出し、人形を遣うという、八面六臂の活躍をします。
今回は、勇者アルジュノと、チャキル率いる鬼軍団の戦いを上演します。目的地へ向かうアルジュノの行く手を邪魔しようと、森に棲む様々な鬼が登場します。鬼がみごとにアルジュノに倒されて行くシーンのことを「プラン・クンバン(花の戦い)」と言います。徹夜の上演の中でダランの人形さばきを楽しむシーンとなっています。

photo by やまうちなみ さん
出演者プロフィール
※ISI=インドネシア国立芸術大学
ウィジャヤ・クスマ■ ジャワ舞踊サークル。2011年~活動。
大石麻未■ ISI ジョグジャカルタ校留学。
2015年~ ジャワ舞踊教室うぃどさり主宰(香川県丸亀市)
岡戸香里■ ISIスラカルタ校他留学・調査。名古屋在住。
西岡美緒■ ISI ジョグジャカルタ校留学。
2011年~ジャワ舞踊サークル ウィジャヤ・クスマ講師。
冨岡三智■ ISIスラカルタ校に留学・調査。2004年~ジャワ舞踊の会主宰、
インドネシアとの芸術交流を推進。
ハナジョス■ ISIジョグジャカルタ校卒業のローフィット・イブラヒムと同校に
留学していた佐々木宏実によるジャワ芸能ユニット。2002年結成。
ビンタンララス■ 2012年~既存のグループの枠を超えて、ガムランとワヤン
(影絵)の魅力を発信する活動を行う。
アナント・ウィチャクソノ■ ISIジョグジャカルタ校卒業。影絵人形遣い

第8回ジャワ舞踊・影絵・ガムラン奉納公演
観月の夕べ
日時: 10月2日(日)午後6時~8時
場所: 岸城(きしき)神社 社殿前
大阪府岸和田市岸城町11-30
併催: 蛸地蔵商店街手作り市 午後2時~境内
出演…舞踊
・ウィジャヤ・クスマ (坂口裕美子、櫻井有紀、西田有里)、
・大石麻未、岡戸香里、西岡美緒、
・冨岡三智
出演…ガムラン音楽
・ハナジョス (ローフィット・イブラヒム、佐々木宏実)
・ビンタンララス (ハナジョス、近藤チャコ、西田有里、松田仁美、山下奈美、
ミヤント、アナント・ウィチャクソノ)
出演…ダラン(影絵の語り・人形遣い)
・ローフィット・イブラヒム
主催■ ジャワ舞踊の会、ハナジョス
後援■ 岸和田市、岸和田市教育委員会、特定非営利活動法人ラヂオきしわだ、
在大阪インドネシア共和国総領事館
協力■ 蛸地蔵商店街手作り市、フロントダッシュ(園田恵子)

photo by 園田恵子さん
・ 岸城(きしき)神社宮司: 阪井正明様 ご挨拶
・ 岸和田市長: 信貴芳則様 ご挨拶
だんじり祭りの試験曳きのため、法被姿のままでご来場くださいました。
・ 在大阪インドネシア共和国総領事館の総領事他皆様は、昼の予定地から少々遅れてのご来場となりました。
舞踊 「サリ・クスモ」
(ウィジャヤ・クスマ メンバー)
作品名は花の精髄の意味。ジョグジャカルタ様式の舞踊で、一番最初に学ぶ曲です。1976年、サスミント・マルドウォ振付。
舞踊 「ゴレッ・ランバンサリ」
(大石麻未、岡戸香里、西岡美緒)
ゴレッは、ジャワのジョグジャカルタ王家のハムンクブウォノⅦ世の時代(1877- 1920)に創られた女性舞踊のジャンルで、当初、宮廷内では女形によって踊られていました。ゴレッには「探し求める」という意味があり、舞踊では、人生の意味や理想を探し求めつつ、大人になってゆく時期の女性を描いています。
ゴレッには伴奏曲と振付の異なる数種類があります。「ランバンサリ」は伴奏曲の名前で、同じ曲でも時代を経るに従って、短いバージョンが作られてきました。今回上演するのはハメンクブウォノVII世当時の振付と言われ、時間も長いため、現在では上演される機会が少ないものです。古い作品のため動きはシンプルでゆったりとしていますが、この時代のゴレッにしかない、おっとりとした美しさがあります。咲き誇る花のような、幸福感に満ちた作品です。

photo by 鈴木朋子さん
― 休憩 ―
舞踊 「ガンビョン・ボンデット」
(冨岡三智)
ガンビョンは20世紀初頭にジャワのスラカルタ(通称ソロ)で発展した舞踊です。民間の豊穣祈願の舞踊に由来するため、結婚式でよく上演されます。現在では若い女性が複数で踊ることが多いのですが、本来のガンビョンは、一晩に一人の踊り手が太鼓の規則に合わせて、半ば即興的に踊り通すものでした。唯一の女性である踊り手は、男性楽師達のマドンナだったのでしょう。ガンビョンも昔の有名な踊り子の名前だと言われています。
ガンビョンの太鼓奏法は現在のガムラン音楽演奏の基本です。本来、どのような曲を使っても伴奏できますが、現在では決まった曲でしか上演されていません。今回は通常と違い、「ボンデット Gd. Bondhet Sl. nem」の曲を使い、独自のアレンジで上演します。


photo by 鈴木朋子さん
影絵 ワヤン・クリ 「プラン・クンバン」
(ダラン: ローフィット・イブラヒム)
ワヤン・クリとは、水牛の皮で作られた影絵人形によって繰り広げられる影絵芝居のことです。ジャワでは、現在でも個人や団体の様々なお祝いごとの際に、ワヤン・クリが夜を徹して上演され、庶民の人気を得ています。ダランは、語りながら音楽に合図を出し、人形を遣うという、八面六臂の活躍をします。
今回は、勇者アルジュノと、チャキル率いる鬼軍団の戦いを上演します。目的地へ向かうアルジュノの行く手を邪魔しようと、森に棲む様々な鬼が登場します。鬼がみごとにアルジュノに倒されて行くシーンのことを「プラン・クンバン(花の戦い)」と言います。徹夜の上演の中でダランの人形さばきを楽しむシーンとなっています。

photo by やまうちなみ さん
出演者プロフィール
※ISI=インドネシア国立芸術大学
ウィジャヤ・クスマ■ ジャワ舞踊サークル。2011年~活動。
大石麻未■ ISI ジョグジャカルタ校留学。
2015年~ ジャワ舞踊教室うぃどさり主宰(香川県丸亀市)
岡戸香里■ ISIスラカルタ校他留学・調査。名古屋在住。
西岡美緒■ ISI ジョグジャカルタ校留学。
2011年~ジャワ舞踊サークル ウィジャヤ・クスマ講師。
冨岡三智■ ISIスラカルタ校に留学・調査。2004年~ジャワ舞踊の会主宰、
インドネシアとの芸術交流を推進。
ハナジョス■ ISIジョグジャカルタ校卒業のローフィット・イブラヒムと同校に
留学していた佐々木宏実によるジャワ芸能ユニット。2002年結成。
ビンタンララス■ 2012年~既存のグループの枠を超えて、ガムランとワヤン
(影絵)の魅力を発信する活動を行う。
アナント・ウィチャクソノ■ ISIジョグジャカルタ校卒業。影絵人形遣い
2016年10月04日 (火)
高橋悠治氏のサイト『水牛』 に今月は「香りの話」を寄稿しました。
→ 「水牛のように 2016年10月」をクリック
→ 「香りの話」をクリック
香りの話
今回はジャワの儀礼で使われる香りの話。ジャワの宮廷では瞑想する時や儀礼が行われる時にお香を焚く。植木鉢大の素焼きの炭炉にいこった炭を何個も入れ、その上からラトゥスratus(練香)を振りかける。練香は日本の香道に使うような小さな粒ではなく、ピンポン玉くらいの大きさだ。それを指先でほぐして炭の上に振りかけると、煙が上がり、香りも立つ。ラトゥスをそのまま炭に置く人もいた気がする。煙が上がるということは、お香が燃えているということ。お香係の人は炭を団扇であおぎ続け、火力を落とさないようにする。お焼香をもっとワイルドに、盛大にした感じと言えるかもしれない。
それは祈りのためではあるけれど、辺り一面に香りが漂うので、空薫(そらだき)のような機能も持っている。空薫とは空間に香りを漂わせること。日本の香道では、いこした炭を灰にうずめて灰を熱くした後、その灰の上に練香や香木を載せて香りを立たせる。つまり、間接熱で香り成分を抽出する。お香を直接燃やすわけではないから、煙が立つことはない。
ラトゥスはバティック(ジャワ更紗)に香りを焚き染める時にも使う。私が王宮でお世話になった人は、両親も王宮で働いていて、その係だったという。日本では、香炉の周りに伏籠(ふせご)という名の、蒔絵の施されたような雅な道具を置き、その上に着物を置いて香を焚きしめるのだが、ジャワでは、闘鶏を入れておくサイズの竹籠(シントレンという芸能や、子供が大地に足を付ける儀式でも使う、能の道成寺の鐘くらいの大きさだと思う)を使い、その中に香炉というか炭炉を置き、籠にバティックを置いて焚き染める。
瞑想といえばムニャンmenyan(乳香)もよく使われる。私はラトゥスは王宮で分けてもらっていたけれど、ラトゥスやムニャンはパサール・クンバン(花市場)に行けば売っている。ムニャンも買って自分でも焚いてみたことがあるのだが、強い刺激臭があって私には使いこなせなかった。ちなみに、ジャワのガムラン音楽の曲で「ムニャン・コバル」という大曲がある。「乳香がくゆる」というような意味で、お供えとしての意味合いの強い曲だろうか…と思ったりする。
他に香るものと言えば、クンバン・スタマンkembang setaman。「花の園」という意味で、紅白のバラ、ジャスミン、カンティル、クノンゴなどの花を、花の部分だけ(茎は使わない)、バナナの葉っぱに盛ってお供えにする。また、バラの花びらを水に浮かべたお供えもそう呼ぶ。私が王宮の人に聞いたところでは、霊はただの水より香りの良い水を好むのだと言う。
ジャワの儀礼ではさまざまな香りが空間を満たしている。部屋の入口の隅にはクンバン・スタマンが置かれ、儀礼が滞りなく終わるよう、お香を焚いて祈る女性たちがいる。霊力のある柱などにも、特別に祈りが捧げられる。舞踊が奉納されれば(舞踊もまた供物の1つなのだ)、踊り手は髪にジャスミンの花で編んだ飾りをつけたり、裾を引き摺るように着付けたバティックの裾の中に紅白のバラの花びらを巻き込んだりする。踊って裾が蹴られるたびに散華のように花びらがこぼれ、香りが立つ。衣裳にも香りが焚き染められている…。こんな贅沢な香りの使い方は日本では見られない。
→ 「水牛のように 2016年10月」をクリック
→ 「香りの話」をクリック
香りの話
今回はジャワの儀礼で使われる香りの話。ジャワの宮廷では瞑想する時や儀礼が行われる時にお香を焚く。植木鉢大の素焼きの炭炉にいこった炭を何個も入れ、その上からラトゥスratus(練香)を振りかける。練香は日本の香道に使うような小さな粒ではなく、ピンポン玉くらいの大きさだ。それを指先でほぐして炭の上に振りかけると、煙が上がり、香りも立つ。ラトゥスをそのまま炭に置く人もいた気がする。煙が上がるということは、お香が燃えているということ。お香係の人は炭を団扇であおぎ続け、火力を落とさないようにする。お焼香をもっとワイルドに、盛大にした感じと言えるかもしれない。
それは祈りのためではあるけれど、辺り一面に香りが漂うので、空薫(そらだき)のような機能も持っている。空薫とは空間に香りを漂わせること。日本の香道では、いこした炭を灰にうずめて灰を熱くした後、その灰の上に練香や香木を載せて香りを立たせる。つまり、間接熱で香り成分を抽出する。お香を直接燃やすわけではないから、煙が立つことはない。
ラトゥスはバティック(ジャワ更紗)に香りを焚き染める時にも使う。私が王宮でお世話になった人は、両親も王宮で働いていて、その係だったという。日本では、香炉の周りに伏籠(ふせご)という名の、蒔絵の施されたような雅な道具を置き、その上に着物を置いて香を焚きしめるのだが、ジャワでは、闘鶏を入れておくサイズの竹籠(シントレンという芸能や、子供が大地に足を付ける儀式でも使う、能の道成寺の鐘くらいの大きさだと思う)を使い、その中に香炉というか炭炉を置き、籠にバティックを置いて焚き染める。
瞑想といえばムニャンmenyan(乳香)もよく使われる。私はラトゥスは王宮で分けてもらっていたけれど、ラトゥスやムニャンはパサール・クンバン(花市場)に行けば売っている。ムニャンも買って自分でも焚いてみたことがあるのだが、強い刺激臭があって私には使いこなせなかった。ちなみに、ジャワのガムラン音楽の曲で「ムニャン・コバル」という大曲がある。「乳香がくゆる」というような意味で、お供えとしての意味合いの強い曲だろうか…と思ったりする。
他に香るものと言えば、クンバン・スタマンkembang setaman。「花の園」という意味で、紅白のバラ、ジャスミン、カンティル、クノンゴなどの花を、花の部分だけ(茎は使わない)、バナナの葉っぱに盛ってお供えにする。また、バラの花びらを水に浮かべたお供えもそう呼ぶ。私が王宮の人に聞いたところでは、霊はただの水より香りの良い水を好むのだと言う。
ジャワの儀礼ではさまざまな香りが空間を満たしている。部屋の入口の隅にはクンバン・スタマンが置かれ、儀礼が滞りなく終わるよう、お香を焚いて祈る女性たちがいる。霊力のある柱などにも、特別に祈りが捧げられる。舞踊が奉納されれば(舞踊もまた供物の1つなのだ)、踊り手は髪にジャスミンの花で編んだ飾りをつけたり、裾を引き摺るように着付けたバティックの裾の中に紅白のバラの花びらを巻き込んだりする。踊って裾が蹴られるたびに散華のように花びらがこぼれ、香りが立つ。衣裳にも香りが焚き染められている…。こんな贅沢な香りの使い方は日本では見られない。
2016年10月02日 (日)

第8回ジャワ舞踊・影絵・ガムラン奉納公演
観月の夕べ
日時: 10月2日(日)午後6時~8時
場所: 岸和田市 岸城(きしき)神社 社殿前
料金: 入場無料 ・カンパ歓迎
併催: 蛸地蔵商店街手作り市 午後2時~境内
――― プログラム ―――
舞踊 「サリ・クスモ」
(ウィジャヤ・クスマ メンバー)
作品名は花の精髄の意味。ジョグジャカルタ様式の舞踊で、一番最初に学ぶ曲です。1976年、サスミント・マルドウォ振付。
舞踊 「ゴレッ・ランバンサリ」
(大石麻未、岡戸香里、西岡美緒)
ゴレッは、ジョグジャカルタを代表する女性舞踊のジャンルです。人生の意味や理想を探し求めつつ、大人になってゆく時期の女性を描いています。今回は、ゴレッが作られたハムンクブウォノⅦ世の時代(1877-1920)の振付作品を3人で上演します。
― 休憩 ―
舞踊 「ガンビョン・ボンデット」
(冨岡三智)
ガンビョンはスラカルタ(通称ソロ)で発展した女性舞踊のジャンルです。豊穣祈願の舞踊に由来するため、結婚式でよく上演されます。今回は通常と違う「ボンデット」の曲を使い、独自のアレンジで上演します。
影絵 ワヤン・クリ 「プラン・クンバン」
(ダラン: ローフィット・イブラヒム)
ワヤン・クリとは水牛の皮で作られた影絵人形またその人形によって繰り広げられる影絵芝居のことで、ジャワでは現在でも夜を徹して上演されます。今回は、勇者アルジュノ対チャキル率いる鬼軍団の戦いを上演します。目的地へ向かうアルジュノを邪魔しようと様々な鬼が登場し見事にアルジュノに斃されて行くという、徹夜の上演の中でダラン(人形遣い)の人形さばきを楽しむシーンとなっています。
ガムラン音楽: ハナジョス、ビンタンララス
―――――――
会場: 岸和田市岸城町11-30
交通: 南海本線・岸和田駅徒歩10分/蛸地蔵駅徒歩5分
※お車の方は岸和田城周辺の公共駐車場をご利用下さい。
主催・問合せ:
ジャワ舞踊の会/ハナジョス(佐々木)
後援: 岸和田市、岸和田市教育委員会、在大阪インドネシア共和国
総領事館、特定非営利活動法人ラヂオきしわだ
協力: 蛸地蔵商店街手作り市
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