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幻視 in 堺公演 ~舞踊合宿の写真
12月初めに踊り手4人が岡山に集まって合宿しました。ふだんはオンラインで練習していますが、食べたり寝たりしている時間以外はずっと踊って細部を詰めていました。

幻視 in 堺公演 ~踊り手と舞踊演目
●踊り手
来る公演:『幻視 in 堺 -南海からの贈り物-』(2023年3月11日、フェニーチェ堺・小ホール) では、昨年の堺能楽会館でスリンピを踊ったメンバー(以下に写真)が再集結します。4人は愛知県、高知県、島根県、そして奈良県に散らばっているので、この4人が揃っての公演はなかなか大変です。普段はオンラインで練習しつつ、合宿で細部を詰めています。

踊り手のうちジャワ人の2人は実際にスラカルタ王家の元・踊り手で、年に一度、王の即位記念日にしか上演されないという儀礼舞踊『ブドヨ・クタワン』の踊り手を務めていました。(一番下のJenyさんの衣装がその『ブドヨ・クタワン』の衣装)。私もスラカルタ王家の定期練習に5年間参加していました。もう1人の岡戸さんは、スラカルタ王家の練習にこそ参加していませんが、私と同じくインドネシア国立芸術大学スラカルタ校で学び、同大学で継承されているスラカルタ王家の舞踊の演目(完全版ではなく短いですが)は習っていますし、スラカルタ王家の分家であるマンクヌゴロ家(本家とはまた少し異なる様式)で舞踊を研鑽されていました。

踊り手の名前の前にあるBatak, Gulu, Dada, Buncitはそれぞれポジションの名前です。宮廷舞踊のスリンピやブドヨにはポジション名があるのです。



Batak: 冨岡三智
インドネシア国立芸術大学スラカルタ校留学
みち

Gulu:  岡戸香里
インドネシア国立芸術大学スラカルタ校留学
Kaori 岡戸香里

Dada:  Anita Sary
スラカルタ王家・元ブドヨ舞踊家
Nunung Sary

Buncit: Jeny Triani
スラカルタ王家・元舞踊家
Jeny Jenny



●舞踊演目
演目はジャワのスラカルタ王家に伝わるスリンピ(女性4人による舞踊)の曲「スカルセ」(完全版)です。実は、2011年に
Gelar社(ジャカルタにある芸術イベント製作会社)がインドネシア観光文化省の助成を得てスラカルタ宮廷舞踊の映像を制作した時に、私は呼ばれて「スカルセ」を含む3曲を指導しました。3曲のうち、「スカルセ」だけyoutubeで公開されています。ただし、編集ミスがわりとあります…。
  ↓
https://www.youtube.com/watch?v=jks1ZAZkysY&t=1160s
P1010012.jpg

また、2012年1月に客船「ぱしふぃっく・びいなす」クルーズでも「スリンピ・スカルセ」を上演しました。踊り手はジャカルタの人たちで(上の映像にも出演)大統領宮殿で国賓歓迎のため踊っているような方々です。私にとっても思い出深く、大好きな曲を今度はまた違った衣装で上演します。
cruise1.15 show


エスニックナイト舞台写真追加
「エスニック・ナイト2022」公演の舞台写真、追加しました。
  ↓
http://javanesedance.blog69.fc2.com/blog-entry-1091.html
スリンピ、ブドヨ完全版公演
今まで上演してきたスラカルタ宮廷舞踊(完全版)は以下の通りです。ジャワでも完全版はなかなか上演されない(伝承されていない)のですが、私はジョコ・スハルジョ女史に師事して完全版全演目(スリンピ10曲、ブドヨ2曲)を修得しました。それを全部公演するのが目標です。今、スリンピ5曲、ブドヨ1曲まで上演しました。

スリンピ・ラグドゥンプル 
2002年1月24日
スラカルタ市クムラヤン地区ソノ・スニ
https://www.youtube.com/watch?v=Kkx1LZ0c8Lw&t=2158s


スリンピ・ゴンドクスモ
2006年11月26日
インドネシア国立芸術高校スラカルタ校
https://www.youtube.com/watch?v=5OTPv6ZwzVE


ブドヨ・パンクル
2007年6月28日
中部ジャワ州立芸術センター(スラカルタ)
https://www.youtube.com/watch?v=flgyvmKurrc&t=1657s


スリンピ・ゴンドクスモ(録音使用)
2007年8月26日
ジャカルタ芸術大学ルウェス劇場
https://www.youtube.com/watch?v=kMvzi9p24zI


スリンピ・スカルセ(録音使用)
Gelar社制作(インドネシア観光文化省助成)、撮影:2011年、公開:2014年
※ 編集ミスがいくつかあります。
https://www.youtube.com/watch?v=jks1ZAZkysY&t=1160s


スリンピ・スカルセ(録音使用)
2012年1月15日
客船「ぱしふぃっく・びいなす」クルーズにて、裾に巻き込むためのバラの花をほぐしているところ
cruise1.15 show

クルーズ船でご覧になった方が撮影された映像。
https://www.youtube.com/watch?v=eCEPD4xOuNE&t=81s


スリンピ・アングリルムンドゥン
2012年9月8日
島根県松江市熊野大社境内
インドネシア国立芸術大学スラカルタ校との共演
https://www.youtube.com/watch?v=emN8e9B_qkI


スリンピ・ロボン
2021年10月23日
堺能楽会館
DSC01568-blog.jpg

2022.12水牛「音に押される」
高橋悠治氏のサイト『水牛』(http://suigyu.com/)の
2022年12月」(水牛のように)コーナーに、
音に押される」を寄稿しました。

音に押される
冨岡三智


去る11/19に大阪の玉水記念館ホールで開催された『エスニック・ナイト2022 ジャワ舞踊編』公演で「ガンビョン・パンクル」を踊った。その時に覚えた不思議な感覚の話。

それは背中に音がぶつかってくるような感覚だった。音楽にはまな板のように厚みがあって弾力もある。まるで、背中に巨大なコンニャクが飛んでくるような感じである。さらに、チブロン太鼓の音や掛け声が手裏剣のように背中に刺さって、背中や腕がぴくぴくっと動く。今まで踊ってきた中で、音がこんな風に聞こえた…というか身体に響いてきたことは初めてである。

ここで押されるとか刺さるとか言ったけれど、決して否定的な意味ではない。こんなに音に支えられた経験もない気がする。踊ったというより、半ば踊らせてもらった感じだ。大音量のロックコンサートでも、ジャワよりもずっと激しいバリのガムラン音楽でも、音は空間全体を満たしても刺さるまでには至らなかった。この公演ではそこまでの音量はないのに、なぜ筋肉が動いてしまうのだろう。この公演では舞踊スペースと観客席が同じ平面で、舞踊スペースの背後に高さ45cmの演奏者用ステージ台がしつらえられ、その上にガムラン楽器が配置された。ちょうど楽器の高さが私の背中辺りになるが、この高さが絶妙だったのだろうか。PAのやり方も関係あるのだろうか…。

ガムラン奏者は床に腰を下ろして楽器を演奏する。通常の公演では楽器は踊り手と同じ平面に置かれるから、音は踊り手の腰よりも低い位置から聞こえてくる。つまり、音は下から立ち上りながら渾然一体となり、踊り手の耳に届く。あるいは、音は天井までいったん上がり、上から降ってくるように聞こえてくる。ジャワのガムラン音楽はそんな風に聞こえるのが当たり前だと思っていたのだが、音が3次元空間のどこからどんな質感でやってくると動きが生きるのか、もっと探求してみよう…と思ったことだった。