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観月の夕べ プログラム
観月の夕べ
2013年9月23日(月・祝)午後6時~8時
岸和田市 岸城神社 御社殿内 


明日に迫った公演のプログラムです。

ガムラン音楽:
ハナジョス、家高洋、稲葉明子、岩本象一、西田有里、松田仁美、アナント・ウィチャクソノ


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「スリンピ・アングリルムンドゥンSrimpi Anglirmendhung」前半
舞踊: 冨岡三智、(西岡美緒)


スリンピは、4人の女性によって踊られるジャワの宮廷舞踊です。「アングリル・ムンドゥン」は「雨雲のような」という意味で、雨をもたらす霊力があると言われています。1790年にマンクヌガラン王宮でブドヨという形式で創られたあと、スラカルタ王宮に献上されてスリンピに改作されました。この曲の前半はグンディン・クマナという、古い演奏法で演奏されます。クマナは宮廷でしか使わない楽器で、ジャワ王宮を守護する女神ラトゥ・キドゥルがこの音色を好むと伝えられています。2人の演奏者が1対のクマナをバチで交互にティン、トン、ティン…と叩き続けますが、その単調なクマナの調べ、上昇下降するメロディーや息の長い節回しなどが、神々に対する畏怖の念をもよおさせます。本公演では、前半だけを少しだけ短くして上演しています。

本来は、先頭の踊り手が先に1人だけ立って四方を巡りながら踊り、続いて4人が立って踊ります。今回はメインの踊り手は1人(冨岡)ですが、もう1人(西岡)が中央に座っています。スリンピは四方舞と言われますが、四方の外よりも、むしろ四方の中央に強力な磁場があるかのように意識して踊る舞踊で、その磁場を観客の皆さんに目に見えるように表現しています。(冨岡三智)

「陰陽ON-YO」(作曲:Dedek Wahyudi)
舞踊: 冨岡三智、西岡美緒
作曲: Dedek Wahyudi


2002年インドネシアの中部ジャワ州立芸術センターにて初演。作曲を、舞踊曲を得意とするDedek Wahyudi氏(インドネシア国立芸術大学スラカルタ校教員)に委嘱。元の振付は冨岡三智。今回はそれをベースに、後半はほぼインプロビゼーションで踊り、ジャワ舞踊のスラカルタ様式(冨岡)と、ジョグジャカルタ様式(西岡)の様式差をあえて出しています。

最初の男性独唱部では、「古事記」のイザナギとイザナミの国生みの神話を歌っており、宇宙の始まりを表しています。宮廷舞踊風にグンディン・クマナの編成で始まり、後にフル編成のガムラン演奏になります。前作の「スリンピ・アングリルムンドゥン」の完全版でもそうですが、宮廷舞踊の古い曲には、前半をグンディン・クマナで演奏した後に後半をフル編成で演奏するものがいくつかあり、それに倣っています。混沌から二つの異なる要素(陰陽、善悪、男女…)が生まれ、それらが対立や葛藤を経て合一、調和した世界に至るという、ジャワ宮廷舞踊と同様のテーマを表現しています。(冨岡三智)

舞踊劇 ラングンドゥリヤンLangendriyan
舞踊: 岡戸香里


ラングンドゥリヤンは中部ジャワ、スラカルタで19世紀後半に発祥し、マンクヌガラン王宮で発展してきたユニークな伝統舞踊劇で、「ジャワのオペラ」とも呼ばれます。すべての役柄は、荒々しい男性の役柄も含めてすべて女性によって演じられ、台詞として使われる歌は、トゥンバンと呼ばれるメロディーと密接に結びついたジャワ伝統韻文詩であるところに特徴があります。物語は、東ジャワのマジャパヒト王国の女王、ラトゥ・アユ・クンチョノウングのエピソード(または、ダマルウラン物語 とも呼ばれる)からとられ、王を取り巻く世界を中心とした「戦い―勝利―死」、「忠誠」、そして「愛(ロマンス)」がテーマとなっています。

<物語の概要>
マジャパイト王国に属しているブランバガンの領主でシャクティ(超自然的力)を持つメナッジンゴ(荒々しく醜い男性)のたくらみで、マジャパイト王国内では反乱が起き、乱れていました。メナッジンゴはマジャパイト王国の未婚の女王、ラトゥ・アユ・クンチョノウングの美しさに惹かれ、策をめぐらして、彼女と結婚してマジャパイトの王になろうとしていたのです。

国内の状態に心を痛めた女王が瞑想していたある時、不思議な声の啓示を得ました。メナッジンゴを倒し、マジャパイト王国を平和な状態に戻すことができるのは、ある村から出てきたダマルウラン(非常にハンサムで洗練された男性)という名の人物であると。女王はダマルウランに軍隊を率いてブランバガンのメナッジンゴを倒し、その証拠としてメナッジンゴの首を持ってくるように命じました。メナッジンゴを倒すため、ダマルウランは召使いを二人だけつれてブランバガンへ出発するのです。ダマルウランはメナッジンゴの妻たちの住む宮殿に入り込み、それに気づいたメナッジンゴは激怒して二人の間に戦いがおこります。その戦いで、ダマルウランは瀕死状態になり気を失ってしまいますが、メナッジンゴの二人の妻に介抱されて回復をとげます。妻たちはメナッジンゴのシャクティの秘密であるウェシクニン(黄色い鉄の意)の棍棒を盗み出して、ダマルウランに渡しました。その後のダマルウランとメナッジンゴの一騎打ちでは、ウェシクニンの棍棒のないメナッジンゴはついにダマルウランによって倒されたのです。その後、ダマルウランは女王の王宮に戻り、彼女と結婚して王となりました。

<今夜の演目に関して>
今夜、演じられる演目は、ラングンドゥリヤンの物語の一部で、Langendriyan Telu (ラングンドゥリヤン・トゥル(Teluは3の意))、または、Damarwulan Kantaka (ダマルウラン・カントコ(ダマルウランの気絶の意))と呼ばれ、メナッジンゴとダマルウランの戦いで、ダマルウランが気を失うところまでの物語です。ふつうはメナッジンゴとその召使のダユン、そしてダマルウランの3人で演じられます。今夜はそれを、メナッジンゴ、一人で演じるという、実験的なものになっています。ただし、観客の皆様の想像力がより掻き立てられるものになるのではないかと、期待しています。(岡戸香里)

ガムラン音楽と歌
1.アヤッアヤッ・ラスム・ブドル・ジュルックAyak-ayak Lasem Bedhol Jejer 
2.~ラドラン・ルジャッ・ジュルッLadrang Rujak Jeruk ※
3.~ランチャラン・ゴドリルLancaran Godril ※
4.~スレペッ・バニュマサンSrepeg Banyumasan


ガムランはインドネシアの伝統的な打楽器を中心とした楽器群、またその楽器で演奏される音楽のことを指します。ジャワではスラカルタ(通称ソロ)とジョグジャカルタの王宮を中心に洗練された音楽が発展しましたが、民間でもさまざまな音楽が発展しました。

今回は、ジョグジャカルタ様式をベースに、ワヤン(影絵)の音楽の伴奏で使われるような、変化に富んだ曲をメドレー式に演奏します。※のついた2と3曲のコーラス部分は、インドネシアを代表するワヤンの人形遣いであり作曲家のナルトサブドNartosabdo(1925~1985)が作曲しています。

2の曲は明るく親しみやすいメロディーで、「あんたしっかりしなさいよ」と妻から夫への気持ちが歌われます。歌い手は多彩な節回しによって、明るく逞しく日常を生きるジャワの女性の様子を歌います。ナルトサブドはインドネシアの様々な地方の様式を積極的に作曲に取り入れましたが、3の曲はジョグジャカルタより西にあるバニュマス地方の音楽を元にしています。続く4のバニュマス風の曲とともに、宮廷音楽とは違って庶民的で躍動感のある賑やかな雰囲気が魅力の音楽で、男性の掛け声も音楽を盛り上げます。(西田有里、冨岡三智)